「何で?!あたしはココに残る!!」
「無茶言わないでよ・・仕事なのよ。それにはまだ中学生でしょう」
引越なんて、何で今更・・・・
離れても、好きでいて?
塾から帰ってきたあたしにいきなり告げられた引越の話。父親の長期海外赴任が決まったから、家族で引っ越すんだって・・。
何でよ。あたしの意見も聞かないで・・どうして勝手に決めちゃうワケ?!
「二週間後に出発するから。荷物まとめておきなさいよ」
駄々をこねるあたしにお母さんはピシャリと言い放った。
折角・・折角と両想いになれたのに。ずっと片想いをしてた彼と両想いになれたのは、つい1週間前のコト。
それなのに・・。
これからいっぱいデートして、いっぱい幸せな時間を過ごすハズだった。まだ・・まだ映画を一回見ただけなのに。
あたしが海外なんかに行ってる間に新しい彼女つくっちゃったら?モテるし・・。
もうやだ、やだやだやだ。
涙を浮かべながら、あたしは親友の明日香に電話した。
「でも、長い間両想いだったんだよ達は。も待っててくれると思う」
学校でもずーっとテンションが下がってるあたしを元気付けてくれる明日香。
お母さんの話だと、あたしが高校生になったら日本で一人暮らししてもいいらしい。
でも・・それまでは『義務』で両親と暮らさなくちゃいけない。
「それに今六月じゃん?ほら、一年もないよ、八ヶ月だけの遠距離だよ?」
・・八ヶ月、か。その間には日本であたしよりも素敵なヒトを見つけるかもしれないし・・。
「に言ってみなよ、ね?」
あたしの肩をとんとんと叩く明日香。問題のは、ベランダで男子とふざけて笑っていた。
「・・、今日の放課後さ、時間ある?」
部活で忙しいんだろうけど、一応聞いてみる。は驚いたような顔をして、部活の後ならって答えた。
「・・ごめん。待たせた」
教室で一人待ってたあたしに部活を終えてきたが一言。
ユニフォーム姿の彼。着替えもしないでココまで来てくれたんだと思う。
「・・・・・・」
自分の声じゃないんじゃないかって思うくらいの震えた声。
恐怖。
自分が見捨てられちゃうんじゃないかって不安で。心の中は真っ暗闇で。
「・・・・・あたしのコト・・・・・好き?」
何言ってるのか自分でもよく分かんなくて。バカみたいに涙溜めて。
もびっくりするだろうな、こんなコトいきなり彼女に言われたら。
あたしが言われたら、驚くどころじゃ済まない。何でそんなコト思うんだろうって、あたしのコト不満かなって考えて、彼を質問ヅケにする。
でも。見上げた彼の顔は驚いてなんてなかった。・・でも、何ていうか、怒ったような顔してて。
「・・お前の父親、海外赴任になったんだろ?」
吐き捨てるように、一言。何で知ってるのって思う前に、恐怖が身体を支配する。
そりゃ、怒る。
告白してきて、これからずっと一緒にいようねって約束したのに、すぐにいなくなるなんて。
責められたって何も出来ないけど、怒るキモチはすごくよく分かったから。
フラれるのを覚悟して、あたしは目を瞑った。
涙が一粒、落ちた。
でも、その涙はドコにも落ちなかった。
「・・・しょっぱい・・」
の唇があたしの涙を拭ったから。あったかくて、優しくて。
そのまま、あたしの唇は奪われる。
「・・・遠いとか、近いとか、そんなん関係ねーだろ。好きなモンは好きなんだよ。無駄な心配してんじゃねー」
唇を離したが、あたしを強く抱き締めてくれて。
「・・お前、遠距離だからって俺がお前のコト好きじゃなくなるとでも思ったのかよ」
「え、でも・・・」
「ナメんな」
怒ったような声で、恐い口調だったけど。
でも、すごく愛されてるなって感じた。
遠くても大丈夫。あたし達愛し合ってるから。
その二週間後、あたし達は出発した。
*遠くても、近くても、俺はお前のコト愛してるから。*
by Ayuna**
この物語は最初、『甘甘10title』の作品の1つになる予定で書き始めたのですが・・。
何だかどんどん違う話になってしまったので、短編としての発表となりました。
えっと、続きも作成しようかとは思います。・・と、言ってる作品が多いんですが・・≪汗≫感想頂ければ幸いです☆