「ねぇ・・今日一緒にさ、駅前のカフェ行かない?」

「・・部活あるから・・悪ィ」

 

 

私のコト、好きですか?

 

私とは付き合ってそろそろ一年経つ。

ロングヘアーが好きだと言ったの為に伸ばし始めた髪も、そろそろ目標の長さに届く。も、部活で念願のレギュラー入りを果たした。

一年前とはカナリ変わった生活を送る私達。

でも。

私とは・・一年前と変わらず『本当に付き合ってるの?』と疑いたくなる様な関係で。

私達が付き合ってる事を知ってる人は私の親友である夢莉だけなのかもしれない。

もしかしたら・・と付き合ってる、と私が思い込んでいるだけなのかもしれない。

 

「ねぇ、ホントにクンって彼女持ちなのぉ?」

「いないように見えるよねぇ?」

「つぅかぁ、一時期噂になった女・・誰だったっけ?」

「やだーっ!!そんなの忘れちゃったしィ」

 

嫌でも聞こえてくるを狙う女の子達の会話。昼休み中の教室は、いつも通り騒がしい。

悔しいけど・・言い返す事も出来ないから我慢する。言い返した所で、『アナタはクンの何なの?』とでも言われるのがオチだし。

朝急いで作ったお弁当の隅に入ってるミニトマトを口の中に放り込んで、怒りを込めて噛んだ。

夢莉が不愉快そうな目で『狙いの女軍団』を睨んだ。それから一言、

、屋上いこ」

と言って立ち上がった。お弁当を急いで引っ掴んで、夢莉の後を追う。

 

 

「う〜ん!!やっぱ屋上ってスッキリするね!!」

大きく伸びをしながら言う夢莉。私も微笑んで、フェンスの近くに腰を下ろした。

お弁当箱のフタを開けて、真ん中に入った玉子焼きを箸で突き刺す。

は甘い玉子焼きが好きって聞いて、毎日毎日入れてる『甘い』玉子焼き。が食べる事はないのに。・・私、バカみたいじゃん。

付き合って一年も経つのに、キスはおろか手を繋いだ事だって3回位しかないし。

一緒に帰る事だって、2〜3ヶ月にあるかないかの出来事だし。お弁当も一緒に食べないし。

電話もメールも私から。・・メールの場合シカメされる可能性アリだし。

 

 

 

ホントに私はの彼女なの?

 

 

もちろん、告白したのは私だよ?でも・・好きじゃないなら、どうしてOKしたの?

 

 

わかんないよ。

 

 

悩んでる私を、夢莉が心配そうな顔で見てた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、どっか行こうって誘ってみたら?」

放課後、学級日誌を書いているに夢莉が言った。どっかに行く・・。そういえば、デートもした事ないなぁ・・・・。

「ほら、例えばさ・・駅前のカフェ、とか」

駅前のカフェはカップルに人気のある『SWEET*TIME』というお洒落なお店。初めて一緒に行ったのはもちろん夢莉。

ソコの雰囲気はどうしても『甘甘』で、友達同士で来るトコロじゃないと痛感した・・。それから全然行ってない。

「・・どっか・・ねぇ・・」

部活を理由に断られそうな気がする。そう思ったけど、口には出さないでおいた。

「ね、そうしよ!!日誌なんてさっさと終わらせてさ」

夢莉はそう言って私を急かした。とりあえず日誌を教師机に置いて、教室を出る。

下駄箱まで走って、やっとを見つけた。『ほら行ってきなよ!!』と夢莉が囁く。

「あ・・の、!」

顔を真っ赤にしながらやっとの事で名前を呼ぶ。が振り向いた。

・・同じクラスなのに(ていうか彼女・・?なのに)、今日話すのは初めて。

「・・・何?」

俯いてオドオドしてる私に、面倒臭そうに言い放つ

 

その後、爆発しそうな心臓を抱えてやっとのコトで誘ったけど・・・。

 

返事は、『部活あるから』だった。

 

 

「ど、どんまい・・・」

スパッと断られて放心状態の私に、夢莉が寄ってくる。もう、私の頭はうまく機能しなくなってた。

「う、うん・・・まぁ、しょーがないよ、部活だし?」

と、言いつつ・・カナリ落ち込んでる私。が歩いていってしまった方向をぼけぇーっと眺める。自然と溜息が零れた。

「でももあの断り方はないって!!部活終わった後〜・・とか、そういう風に言ってあげればいいのに!!!!」

夢莉はブーブー文句を言ってる。・・それもそうだなーなんて、ちょっと考えてみちゃったり。

「ね、『部活終わった後でいいから』って言いに行こ!!あたし諦めきれないよ」

夢莉が真剣な顔で言う。自分の事じゃないのに、こんなにもアツクなってくれる友達を持てた私は幸せだな・・と思う。

『しつこい女』とか思われそうな気もしたけど、もう歩き出した夢莉の後を黙ってついてく事にする。

 

 

 

 

 

 

「あのね、部活終わった後でいいから・・ダメ・・かなぁ?さっきのヤツ・・」

部室の入口の横で、私はをまた誘っていた。夢莉はマネージャーの先輩と知り合いみたいで、雑談してる。

「・・・終わる時間、遅ェし」

「遅くても待ってるから!!・・・ダメ?」

カナリしつこいな・・って自分でも思う。迷惑だろうなって思いつつ、やっぱり諦められない。

は黙って首を傾げた。微妙・・・と解釈すればイイのかなぁ?

「・・じゃぁ、一緒に帰るだけでもいいから・・」

自分の声が小さくなったのが分かった。コレも断られちゃったらどうしよう?

「・・・・・しろ」

「ぇっ?」

「・・・好きにしろっ!!」

はそう言った後プイッとそっぽを向いてしまった。・・怒らせちゃった?!

「じゃ、じゃぁ好きにしちゃうからね!!待ってるね!!!」

 

その時私は気付かなかったんだ。彼の耳が、真っ赤になっていた事に・・。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、今日の練習はココまでだ!各自水分補給しとけよ〜解散!」

顧問の先生らしき人が手をパン!と叩きながら言った。の言っていた通り、もう空は真っ暗。携帯の時計を見たら、もう7時近かった。

「・・ホントに待ってたのかよ・・」

部室棟の脇にある水道の上に座った私を見て、が呆れたように言った。

「だって・・一緒に帰りたかったんだもん・・」

「暇じゃなかったのかよ?」

見てたから楽しかったよ?」

エヘヘ・・と笑いながら水道から降りる。も呆れたように笑った。

「・・急がねーと校門閉まるぞ」

はそう言って歩き出した。ちょっと走って、彼の隣に追いつく。隣から彼を見るのは久しぶり・・。なんだか嬉しくなって、私はちょっと微笑む。

 

「・・駅前の店・・行くのかよ?」

校門を出た後、不意にが言った。そういえば・・ソレ、誘ってたんだっけ。

「ん?今度でいいよ。今日は一緒に帰れるだけで幸せっ」

彼を見上げてニコッと笑ってみる。は私から視線を逸らして「アホ」って言った。

なんか、こういう雰囲気いいな〜って思ったり。恋人っぽくて・・。こういう雰囲気憧れだった。

手も繋いでないけど、ちょっと二人の間に距離あるけど。それでも、すっごく嬉しくて。

過ぎて行く風景が、いつもと違って見えたのは、気のせいじゃないよね。

 

 

いつもはもっと時間かかってる気がするのに・・・気が付いたらもう駅に着いてた。

私とは方向が違うから・・もうお別れ、なんだよね。

「遅いし、送る」ってさっきが言ってくれたんだけど、部活で疲れてるんだろうし、私が勝手に待ってただけだし、遠慮しといた。

「・・・ホントにいいのかよ?」

「うん、大丈夫だよ?ありがとう」

なんだか納得のいかない顔で、は黙り込んだ。ホームに電車が入ってきた。

「・・それじゃ、また明日ね!」

精一杯の笑顔をつくって、大きく手を振って、

「・・!!」

の呼ぶ声に振り向いて。頭を引き寄せられたな・・って、思った瞬間。

 

 

 

 

 

 

私の頬に、何だかあったかいモノがあたって、離れた。

 

 

 

 

 

そう、それは紛れも無いの唇で。

 

 

 

 

 

「っ、・・?!」

いきなりのコトに驚いてを見上げると、は今日のお弁当に入ってたミニトマトよりも真っ赤な顔をしてた。

「・・・・・いっ、今っの・・が、俺の、その・・気持ち・・だから・・」

そう言うとは私の肩を押して、電車に乗らせた。

『〜2番線、ドアが閉まります。ご注意下さい〜』

アナウンスの声。の側のホームにも電車が入ってきて、は私に背中を向けた。

「っ!!明日も、部活終わるの待ってるから!!!」

そのアナウンスの声に負けないような大声で、私は叫んだ。

ドアが閉まり出す。が振り向いて、

 

「・・ギリギリ?」

 

電車に駆け足乗車してきた。

 

・・?!」

なんで?の家は、反対方向なのに・・?!

「・・お前、毎日待っててくれるんだろ?」

「ぇっ、うん」

「じゃぁ、俺もの事送るの日課にしねェとな」

 

 

少しづつ、ゆっくりでいいから、一緒に前進していこうね。

 

 

 

+end+

 

 

 

by Ayuna**

部活熱心クンと、引っ込み思案?チャンのお話でしたぁ〜。≪黙れ≫
どうでしたでしょうか?この設定は結構お気に入りなのですが・・。

こういうカップルの話はすぐ浮かぶんです☆という訳で、続編も考えてます♪♪
なんだかんだ言って愛されてるんですよ。2人とも不器用なんです!
・・と、なんだか『不器用恋愛』(長編)とカブる事を言ってしまいましたが・・

感想待ってます!