人を恋しいと想う心。
人がいつか必ず感じるキモチ。
05 恋心
もう、何であたし保健委員なんてやってんだろ。
放課後の保健室。あたし以外誰もいない静かで涼しい部屋。
窓に近寄れば校庭で活動してる運動部の人達の声とかが聞こえてくる。あの人もきっとあの中にいて、イイ汗流してるんだろうな、なんちゃって。
毎週水曜日の放課後は二年五組が当番のこの『放課後保健当番』。
部活とかでケガした人とかの処置を保健の先生と、各クラス二人づつの保健委員とで行う保健委員の仕事の一つ。
でも。
保健の先生は会議、もう一人の保健委員のコ、茄奈は熱で学校欠席。
・・なんであたしがたった一人でこんなツマンナイ仕事やらなきゃいけないの・・?
どうせ誰も来ないし。保健委員になってもう三ヵ月は経つけど、一度も怪我人が来たコトなんてない。
・・処置の仕方とかもちょっとしか知らないし。ヘタクソだし・・・・・。
もう帰っちゃおうかな、とか思ってたその時。
「・・あれ、何してんの?」
ガラガラッと音をたてて校庭側の窓(っていうよりドア?)が開いた。腕から血を出してる男のコがあたしに向かって驚いたような声をあげる。
「あ、。あたし保健委員で・・・っていうかケガしてんじゃん?!」
腕からダラダラ流れてる真っ赤な血。ボケーッとベッドに寝っ転がってたあたしは飛び起きた。
「別に大したコトねーよ。つーかお前保健委員だっけ」
「うんそう・・ちょっと、ソコ座って!!」
腕から血を流して平気な顔してる彼。あたしがさっき考えてた『あの人』は、実はこのヒト。あたしがずーっと片想いしてるヒト。
彼を椅子に座らせて、消毒液とか色々持って、いわゆる『処置』?の準備を始めるあたし。
「そんな大したコトないって。・・消毒だけでいい」
「良くない!!あたしが見てて痛い」
もう、何で平気そうな顔してられるんだか。消毒した腕にガーゼを当てて血を止めながらそんなコトを考える。
「痛くない?」
「全然」
「・・・強がってない?」
「・・別に」
続かない会話。とりあえず止血を終えて、バンソーコーを貼る。
「はいっ、終わり!」
我ながら上出来、なんてちょっと自画自賛してみたり。
「サンキュ」
さすが保健委員、なんても言ってくれて。やっぱり好きな人に言われると何でもないコトがすごく嬉しい。
「じゃ、俺練習戻るから。アリガトな」
「いえいえっ!もうケガしないでよー?」
片手をちょっと上げて歩いてく。
ケガしないでって言ったけど・・。もう一回来て欲しいかも・・。
あっ、でも・・ケガとかはしないで欲しいし・・・。一人の保健室で考え込むあたし。
こんなキモチになっちゃうのは、に恋してるカラ。
複雑な乙女のコイゴコロ。
* end * 『甘甘10title 05 恋心』
by Ayuna**
今回は『恋心』というコトで、片想いの女のコの純粋で複雑な恋心を書かせて頂きました!
こういう気持ちになっちゃうコ、多いと思うのですが・・。
大好きなヒトの健康とか安全とかを願う一方で、ケガとかしてでも自分に会いに来て欲しいってキモチ。それでは、感想待ってます♪