「今日の練習、武道場で筋トレだって。」
「マジかよ!剣道部とか居るんじゃねーの?!」
「あたしたちが使うの柔道場だから、剣道部関係ないよー、直哉。」
「柔道部は?!」
「・・今日大会だろ。」
「マジかよー!」
07 武道場
土砂降りの雨。英語では「It rain cats and dogs.」とか表記するらしい。
不思議だよね、猫と犬が降る、なんて。
「次、スクワット250回!」
私の声に、部員たちの呻き声。・・今日のメニューは、一段とハード。
雨の日。
私たち野球部は、グラウンドが使えない為にほとんど練習できない。
学校の廊下で筋トレをする、とか・・部室で筋トレする、とか・・その程度。
しかも、場所が場所だから人数が限られてくる。
もちろん時間も限られてくるから、実質ほとんど練習できないと言ってもいい。
梅雨の時期に入ったのか、ここ数日は毎日のように雨が続いていて、
ほとんど(全くと言っていい程)・・私たちは練習していなかった。というか、できなかった。
日に日に、高橋先生の機嫌は悪くなっていった。(ほんと、恐くなるくらいにね。)
・・まあ、大会も近いし。イライラするのも分かるけど。
で、今日。最近お決まりとなっていた、
『高橋先生、今日も雨が降っていますが、練習のメニューはどうしましょう?』
・・を、職員室に聞きに行ったら。
気持ち悪いくらいの(・・えっと、恐いって意味で、ね?)笑顔で、高橋先生がこう告げたの。
『今日は柔道部が大会だ!』
・・って。
うちの高校は、私立だけあってかなり立派は武道場がある。
すっっっっっごく広い。野球部が全員入っても、まだまだ余裕があるくらい。
つまり。
ひろーい武道場で、みんなで筋トレ!・・が今日のメニュー。
いつも柔道部が使ってる所だから、時間も気にしなくていい。
・・まるで鬱憤を晴らすかのように、高橋先生は超大量のメニューを私に言い渡したってわけなのです。
「ねえちゃん。・・オレたちのこと、殺す気じゃないよね?」
荘司センパイが縋るような目で私を見る。
・・いくら強豪の野球部と言えど、今日のメニューはキツすぎる。素人目に見てもそう思う。
だって、量が半端ない。いつものメニューでさえ、多過ぎるんじゃないかって思うのに・・
単純計算で、ざっと6倍はあるんじゃないかな。
(まあ、武道場だから筋トレしか出来ないし、しょうがないとは思うけど・・。)
「え、えっと・・でもほら、大会近いしっ!荘司センパイなら大丈夫です。」
何とも言えなくなって、苦笑いで受け流す。(ごめんなさい、センパイ・・)
「・・こんくらいでバテてんですか、センパイ。」
の声だ、と思った時にはもう、私の手にあったタオルは抜き取られてて。
ぽたん、と私の肩に落ちてきた雫は多分、の汗だと思う。
「あ、悪ィ。」
ぽんぽん、と肩に付いた汗を拭ってくれる。
別にいいのに、・・なんて思っちゃう私はただのヘンタイなのかもしれない、なんて。
「は?何、終わったの?」
「ういっす。」
「マジかよお前!怪物か?」
「・・センパイの体力が無いだけっすよ。」
荘司センパイに向かって、余裕の表情で微笑む。
ちょっと、・・ううん、すっごく、ドキッとした。
「は、テメ何言ってんだし!こんなん余裕だよ見てろ!」
ムキになった荘司センパイが、すっごいスピードでスクワットを始める。
うんうん、このスピードでもちゃんと膝曲がってる。
・・とか何とか思ってたら、私の隣で終わったはずのスクワットを再開させる。
「あ、れ。、終わったんじゃなかったの?」
「ん?・・あー、終わったけど。」
負けらんねェし。
私に向けたはずの言葉の響きを、自分で確かめる。
負けらんない。
その短い言葉にどれだけの気持ちが込められてるのか、私、知ってるよ。
荘司センパイへ向けた言葉を自分に向けて、ひたすらに我武者羅に頑張る、
私の大切な人。
今日もまた、胸の奥が熱くなる。
頑張れ、。
*今日もまた、あなたに恋してる。 07 武道館*
by Ayuna**
随分と久しぶりな更新となりました(汗。
お久しぶりです、あゆなです。今回の作品は・・何と言うか、恋愛小説ってよりは『青春!』・・って感じですよね?(殺。
いや、あの、あゆは頑張ってる人が大好きなんです。
それにほら、ちゃんは永遠の「恋する乙女」ですので・・(汗。付き合ってるのに、恋してる・・みたいなのが書きたかったんです。
という訳でまた進展無しなのです(汗。感想お待ちしています。